vsセレッソ(10節・2020/8/15) ボールを持てるようになってきたかもしれない。

 結果は残念なものとなりましたが、内容は悲観するものではありませんでした。ネルシーニョ監督も「内容は今季一番」との認識を示し、自分たちの現在地が間違ってはいないこと、継続することの重要性を選手にも伝えたとコメントを残しています。

(内容は今季一番とだと見えたが、勝敗を分けたのは?)
自分もそう思っている。ゲームの入りから良いテンポで選手たちのクオリティ・個々の特徴も生きていたと思う。ゲーム全体のボリュームを見ても非常にいい入りができた。あとはボールが(ゴールに)入るだけだったというゲームの内容だった。

今日の戦い方を続けていけば、おのずと結果は訪れると選手たちにはロッカーで伝えた。しっかり次節に向けて継続しながら準備をしていこうと選手たちに伝えた。 

 疑問1:なぜボールを保持できたのか?

答え1:セレッソの守備の最優先事項が「背後のスペースを空けない」だったから

 試合を通じて柏のボール支配率は60%に近い水準で推移しました。この現象は、セレッソのゲームプランが要因だと解釈しました。
 セレッソは、守備時の最優先事項を「背後のスペースを空けない」ことに設定していたものと思われます。前線からのハイプレスによるボール奪取を目指すというよりは、まずは自陣に撤退することでスペースを与えないことを優先事項とするプランだったように思われます。
 そのプランを選択した理由は、柏のカウンターを警戒したことや、猛暑と過密日程による消耗を最小限に抑えることなどが挙げられます。柏と同様にカウンターを長所とする東京との対戦時でも撤退を選択していたことから、そのように解釈いたしました。
 柏がボールを保持できた理由は、セレッソが撤退を選択したことで、柏のビルドアップ隊は時間とボールを確保したからということになります。「疑問2」で触れますが、CBに太陽を選択した理由もここにあるものと思われます。

答え2:柏の守備が良かったから

 以下はセレッソ大阪・ロティーナ監督のコメントです。

柏のプレスの前に、ボールを失い過ぎて、攻撃を受ける回数が増えました。

Q:ボール保持の時間も短く、苦しい展開が続いた中で、相手にクロスやシュートもかなり打たれたが、今日の守備で特に良かった点は?
「ビルドアップではうまくいかずに、守備の時間が長くなりましたが、チーム全体でいい守備ができたと思います」

 ロティーナ監督は、「柏の守備がよかったことから、ボールを失ってしまい守備の時間が増えた」と述べました。

柏の[守備]対応 

 柏の[守備]は、セレッソのビルドアップに対して、前から枚数を合わせる形でプレッシングを行いました。ミカの第1プレッシングで中央のパスコースを遮断し、江坂やCHが連動することで、サイドにボールを誘導したところで、奪い切るorロングボールを蹴らせるというのが基本的なスキームでした。柏のプレス回避のため、セレッソはロングボールによる前進を図る場面が増えていきます。しかしながら、太陽・祐治が競り勝つことで柏がボールを回収し、再び柏がボールを保持する時間が続きました。

柏の[攻撃→守備]の対応

 柏がボールポゼッションによって敵陣に押し込む展開でゲームが推移します。柏のボール保持の際、柏ベンチからCB(太陽と祐治)に対して「もっと押し上げろ」「コンパクトに」との指示が頻繁に飛んでいます。つまり、敵陣でボールを失った瞬間にすぐさまプレッシングを開始できるよう全体をコンパクトに保つ必要がありました。ボールの逃げ場所を潰しておくことで、前線で奪取に成功すればショートカウンターを、ロングボールを蹴ってくれば最終ラインでの回収によるボールポゼッションの回復を図るスキームです。

疑問2:なぜCBは川口ではなく太陽だったのか?

 マリノス戦、大分戦とCBとして十分な働きを見せた川口がメンバーから外れました。太陽が右SBとして好調を維持していたことから、CB川口・SB太陽を予想するメディアが多かったものの、ネルシーニョ監督はCBに太陽を起用しました。その理由を解釈してみます。

答え1:ボールを保持する展開を織り込み、ビルドアップを期待したから

 「疑問1」で触れたように、ボールを保持する展開でゲームが推移することは、スカウティングの段階で想定できたものでした。足元の技術に優れた太陽をCBに起用することで、後方からのポゼッションやビルドアップの質を向上させることが目的だったと思われます。ボールと時間を有する展開であったことから、相手のブロックを動かしながらの前進が求められました。柏アカデミー出身者らしい振る舞いによって、十分に与えられたタスクを遂行したものと思われます。ネルシーニョ監督も以下のように述べています。

古賀は終始落ち着いて良さや個性をしっかり全面に出しながら、攻守においてビルドアップでも起点になってくれていた。

答え2:ロングボール(空中戦)対策

 「疑問1」でも触れたように、前からのプレッシングによって被ロングボールの回数が多くなることが予想されました。空中線の対応はCBを本職とする選手に任せたい、という考えがあったものと解釈しています。前節・マリノス戦後に川口が興味深いコメントを残しています。

真ん中では普段と全く違う見慣れない光景で難しいところはあったが、足元で繋いできてくれる分、自分としては空中戦が多いよりは対応しやすかった。

  マリノスのゲームモデルを鑑み、空中戦にはならないことを織り込んだ上で、川口CBという判断に至ったのではないかと思われます。セレッソ戦では、空中戦やロングボールでの対応が求められることから、太陽を選択したと解釈すると筋が通っているように感じます。

締めの言葉というほどのものではないけれど

ゲーム全体のボリュームを見ても非常にいい入りができた。あとはボールが(ゴールに)入るだけだったというゲームの内容だった。フィニッシュの数の数字を見ても自分たちが20本近く打っているの対して、相手は6本という結果もみている。ただ、敗戦という事実には真摯に向き合わなければいけない。

 ネルシーニョ監督のコメントがこの試合の全てを表しています。年に数回はこんな試合あるよね・・・というゲームだったと思います。
 ミカ対策(要はカウンター対策)によって背後のスペースを消してくるチームが増えてきました。自ずとボールを持つ時間が増えることとなります。ビルドアップやポゼッションの質を向上せざるを得ない状況です。
 ネルシーニョ監督もビルドアップの際のポジショニングや体の向きなど、以前よりも細い部分まで要求している様子が窺えます。特に、ボール保持者がオープンな状態(前が空いている状態)にもかかわらず、ドリブルでの持ち運ぶことを放棄した際には厳しく指摘しています。