柏のゲームプラン
ネルシーニョ監督
自分たちは幅を使ってじっくりボールを動かしながら攻撃の入口を見つけようというプランでこのゲームに臨んでいたが、相手の人数の揃ったコンパクトな守備に攻撃を阻止されるというシーンが非常に多かった。
柏のプランは、ボールを保持しながらゲームを支配することでした。そのプランの中で、大分の組織的な守備を崩すことができなかった、というのが大きなゲームの流れだと解釈しました。
余談ではありますが、「今季一番」と評したセレッソ戦以降、ボールを保持しながらゲームを進めることに自信を持った印象を受けます。大分を崩し切ることはできなかったものの、攻撃の選択肢に速攻(カウンター)と遅攻の2パターンを有することで、相手に的を絞らせないことが可能です。
大分・片野坂監督も「始まってから見極める」主旨のコメントをダゾーンに残しており、「どのプランで来るかわからない」という幅を持つことは、立ち上がりから主導権を握る上で有効だと思われます。
大分のゲームプラン
大分は、柏のカウンターを最小限に抑える(威力・回数)ことを前提として、ゲームプランを組み上げたものと思われます。
大分・鈴木選手
相手(柏)の一番の特長はカウンターだと思っていたので、そこでのリスク管理とルーズボールの処理はシンプルにやろうと臨んだ。
柏のカウンターを警戒していたことを読みとることが可能です。カウンターが強みなら、ボールを持たせてしまえば良いという考え方であったものと思われます。
守備では、柏のビルドアップに対して541の撤退を選択しました。自陣に低く構え、背後のスペースを埋めつつ、カウンターでの得点を目指すというプランだったものと思われます。
ネルシーニョ監督も大分のプランと印象について以下のように述べています。
おそらく相手もカウンター狙いでゲームプランを立ててこのゲームに臨んだと思う
前半は自分たちのミスをうまく使われてカウンターに出て行かれるシーンが多く見られた
理想と現実(プランと実際)
立ち上がりこそ柏のボール保持で試合が推移したものの、次第に大分がボールを保持する時間が増えていきます。柏の支配率は前半の給水タイムで43%、前半終了時点で48%、試合を通じて44%程度と、大分がボールを保持する展開で試合が進みました。
非保持の時間が増加した要因は、
- 攻撃が上手くいかなかったこと(大分の541撤退を攻略できなかった)
- ボールを奪い返せなかったこと(大分のポゼッション、連戦によるプレッシングの強度不足)
などが挙げられます。
1、攻撃が上手くいかなかったこと(大分の541撤退を攻略できなかった)
大谷選手
大分は守備の時にしっかりと組織的に戦うチームだとスカウティングの段階から理解していたが、自分たちが(攻撃の)最初の入り口のところで上手くボールを前線に運べなかったし、なかなか相手の嫌なところ、ライン間でボールを運べなかった。 後半は選手を入れ替えながら何度かサイドからワンタッチで中に入る場面はあったけれど、回数自体は多くなかったので、攻撃のところは課題が残ったと思う。
柏の非保持の時間の増加(大分のボール保持の時間が増加)した要因は、監督や選手も述べているように、大分の組織的かつコンパクトな守備ブロックを崩せなかったからです。柏は横幅を広く保ち、ボールを左右に動かしながら、攻撃の糸口を探りました。
しかしながら、大分の541という強固なブロックを前に攻撃が完結しないシーンや、ブロックに引っ掛かり、ボールをロストするシーンが目立ちました。
大分がプレッシングに出てこない戦い方を選択したことから、大分陣内にはスペースがなく、柏は前進に難儀する様子が伺えました。ランニングによって裏へ抜けるスペースも、ライン間で受けるスペースもなく、難易度の高い(成功確率の低い)パスやドリブルでの打開が増加しました。
2、ボールを奪い返せなかったこと(大分のポゼッション、連戦によるプレッシングの強度不足)
また、自陣のブロック内でボールを回収した大分は、ゴールキーパーを含めたパス交換によって、柏のプレッシング回避を図りました。自分たちがボールを保持することは、相手にボールを渡さないことでもあります。つまり、守備の時間を減少させることになります。
元より大分は、ボールを保持しながら相手を自陣に招き入れつつ、空いた背後のスペースを突く「擬似カウンター」と呼ばれる攻撃を得意としています。
(擬似カウンター:本来は相手の攻撃→守備の瞬間に相手の背後を突くことをカウンターと表現します。「擬似カウンター」は、自分たちがボールを持った状況でカウンターに似た状況を作ることから、「擬似」と形容詞がついたものと思われます。)
大分は、擬似カウンターのきっかけでもある自陣でのボール保持を得意としていることから、容易に柏のプレッシングを回避に成功しました。
柏としては、奪い返せなかった局面と、体力の消耗を考慮して自陣に構えた局面とが存在しており一様に断じることは難しいものの、結果的に大分にボールを渡す時間が増加しました。
連戦に次ぐ連戦の影響でプレッシングの強度を保つことが出来なかった側面も強かったものと思われます。
三原選手が鹿島戦前のコメントで大分戦について言及しました。有料記事であることから引用は差し控えます。要約すると、「もう少しボール保持の時間を増やしつつ、前で奪ってショートカウンターを仕掛けたかった」旨の発言です。