vs鹿島(13節・2020/8/29) タイトルが思い浮かばない

 試合は、ボールを保持したい柏vs撤退からカウンターの機会を窺う鹿島といった構図で推移しました。

鹿島が撤退を選択した理由3つの理由

  1. 保持しながらの前進・攻撃は、柏の長所であるカウンターの機会を誘発すること
  2. そのカウンターを防ぐためには、トランジションに一定の強度が求められること
  3. 柏のCBが本職ではないこと

 中5日の柏に対して鹿島は中2日。連戦を考慮し省エネモードで試合に入る鹿島は、442でミドルゾーン自陣よりに守備の陣形をセットしました。鹿島の2トップは、柏のビルドアップ隊に対して時間を与えないというよりも、コースを牽制する程度の強度でプレッシングを行い、サイドへ誘導したところを圧縮して回収します。

  鹿島はボールを奪取した際、シンプルに柏DFラインの背後にボールを放り込みます。理由は①保持しながらの前進・攻撃は、柏の長所であるカウンターの機会を誘発すること②そのカウンターを防ぐためには、トランジションに一定の強度が求められること(試合間隔が少ない鹿島にとって体力的に不利)③柏のCBが本職ではないこと・・・などが挙げられます。

 ①と②は大枠で解釈すれば同義かもしれません。チーム全体でボールを持ちながら、陣地を押し上げる・・・それは自分たちの背後にスペースを作ってしまうことになります。その背後のスペースを使わせないためには、失った瞬間にゲーゲンプレスを行う必要があります。背後を突く時間すら与えない強度のプレッシングを続けることが求められます。日程・気候等の諸条件を考慮すれば、断続的なプレッシングを行うことは懸命ではありません。

 ③については、柏の厳しい台所事情によるものです。既知の通り、CBに怪我人が続出しています。川口の投入直後、ロングボールへの対応がナーバスになったシーンが見られました。であるならば、ボールを保持しながら攻めることもないよね、シンプルにCB目掛けてボールを蹴っ飛ばした方が効果的だよね、という判断だったものと思われます。

 また、①②と同じ理屈で、ボールを持ちながら攻撃をする柏の背後にはスペースが存在します。そこを突こうという考え方は至極真っ当な選択です。

 鹿島・ザーゴ監督のコメントからも、柏のボール保持を織り込んだ状態で試合に臨んだことを読み取れます。

特に相手は中日に試合がなかったということで、おそらく戦略的にウチらにプレッシャーを掛けてくると予測した上で、逆にその強度を利用してひっくり返す

柏のボール保持について

 柏は鹿島が撤退を選択したことによって、ボールを持つ時間を得ることができたのは前述の通りです。

 柏のボール保持は、大谷が後方へ降りること(たまにヒシャもやる)で2トップに対して3枚で数的優位を確保する形となりました。そこにヒシャを加わえた【3-1】での前進を図りました。後方で数的優位を確保し、ボール保持の安定化を図ることで、SBを高い位置に押し上げる(SBが横幅を取る)時間を確保します。

 大谷は左のCB-SB間に降りることが多く、チーム全体としても左サイドからの前進が増えていきます。442でブロックを敷く鹿島に対して横幅を取る三丸のクロスからの得点を目指しました。深い位置を取った三丸のクロスボールからPA内へ侵入する場面が多数見られ、再現性を感じました。得点には至らなかったものの、あと一歩のところまでは崩すことができたと解釈しました。

 スタートの配置はサヴィオ左SH、江坂トップ下。これについても、クロスボールが増加することを織り込み、江坂を中央に配置することで中で合わせる枚数を確保する狙いがあったと考えられます。

 加えて休息なしに出場を続ける江坂のタスク・運動量の軽減を図る目的もあったものと思われます。

 しかしながら、江坂をトップ下に配置することは、サヴィオをサイドに配置することになります。サヴィオはウイングとして独力で打開を図るタイプの選手ではないことから、なるべく中央に配置したいというのが本音のところです。神戸、大分と連続でトップ下で起用されています。

 その落とし所、解決策として、横幅をSBに取らせ、サヴィオは内側の絞ったところからビルドアップを開始することが多かったように見えました。

最近のボール保持について

 柏は(リーグの)セレッソ戦以降、ボールの保持をゲームのプランに据えることが多くなっています。要因としては、オルンガを中心としたカウンターへの対策として「カウンターが怖いなら、柏にボールを持たせればいいよね」という戦い方を選択するチームが増えてきたことが挙げられます。つまり、外的要因によるパラダイムシフトを迫られた、と。

 加えてCB陣には負傷者が続出している状況にあり、撤退で守り切ることへの不安が生じます。事実として、鹿島戦後半は一人少なかったこと、前半で交代カードを2枚切っていたことなどイレギュラーな事態があったにせよ、撤退を迫られた展開で2度のリードを守ることができませんでした。

 撤退での守備に不安が残るなら、攻撃の時間を増加させること、ボールを保持する時間を増加させることで守備の時間を減らしていこう、と考えるのは論理的な判断と思われます。