vsガンバ(15節・2020/9/9)【4312】とか、ポゼッションとか、ロングボールとか。

 良記事と戸田さんのレビュー動画をシュアします。正直、この2つだけで充分だと思いました。


柏 vs ガンバ 簡単レビューを帰りの車内から 

 

【4312】でボールを保持する立ち上がり

 ガンバのロングボールから始まったキックオフ。ボールが落ち着いた最初の保持の局面から、柏は丁寧にボールをつないでいく姿勢を見せました。

 2枚のCB(太陽・次郎)+アンカーに入った大谷を含めた3枚で、ガンバの2トップに対して【3vs2】の数的優位を確保します。2枚のCBは少し開いた【ハーフスペースの入り口】にポジションを取ることで、ガンバのプレッシング隊の基準を逸らしていきます。

 また、復帰を果たしたスンギュも足元でボールを扱う技術に長けていることから、ビルドアップに加わるシーンが見られました。その際は4枚で菱形を作り【4vs2】を作ります。柏CBはプレッシングを受けてボールが詰まったとしても、スンギュまでボールを預ければある程度ポゼッションを確保できる構図となりました。 

 加えてガンバ2トップは柏のビルドアップ隊3枚(もしくは4枚)を見なくてはならないことから、強度の高いプレッシングを行うことができませんでした。2トップの脇からの前進、縦パスを許すようになっていきます。

 余裕を持ってボールを保持する柏CB(主に太陽)は、運ぶドリブルによってガンバのCHを引っ張り出すことに成功します。ガンバも基本的な考え方としてはボールを保持したい。であれば、やっぱり柏のビルドアップ隊にはアプローチを行いたいという葛藤の中、井手口選手が飛び出す格好で牽制を図ります。

 しかしながら、ポジションを離れるということは、そのスペースを空けてしまうことになります。柏は、井手口選手を誘い出す形で、中央から(守備の)人を動かすことに成功します。人を動かしたことで縦パスのコース確保に成功し、相手の背後を突いていきます。先制点はまさにその形からのものでした。

 柏の配置による数的・質的優位に加えて、ガンバの2トップのプレッシング強度がそこまで高くなかったことから、柏のビルドアップ隊は時間とボールを確保した状態で試合は進みました。

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ロングボールによる前進という選択肢

 前述した通り、ガンバはボールを保持して試合を進めたい。だからボールを奪わなくてはならない。ということで、柏のビルドップに対して前から人数を合わせる形でプレッシングを行うことで反撃を目指します。特に柏陣地ではスペースよりも人への意識が強い印象を受けました。失った瞬間のゲーゲンプレスによって、即時回収を図ります。

 ガンバのゲームモデルがボール保持であることを織り込んでいる柏は、【ロングボールによる前進】という回答を用意します。【ロングボールによる前進】を選択できた理由は2つあります。①ガンバが前プレ(+ゲーゲンプレス)を選択したことで後方が数的同数だったこと、②柏の後方でのボール保持が安定していることです。

 まず、①についてです。
 【前プレ】とは、守備の枚数を前線からのプレッシングに合わせることです。そしてそれは、裏を返すと後方での数的同数を許容することです(最終ラインの守備は、1枚多く残すことがセオリーです)。

 加えて【前プレ】は、自分たちの背後に広大なスペースを空けてしまうことにも繋がります。つまり、この試合のガンバは、オルンガと呉屋の2トップ+江坂に対して後方が数的同数で守るリスクや、背後のスペースを突かれるリスクを受け入れることで前から守備、前プレを行ったということです。

 続いて②についてです。前述した通り後方でのボール保持が安定している柏は、自陣でボールを保持する時間が増えていきます。自陣からのビルドアップによる前進という狙いがあったほか、自陣でボールを持つことで相手の前プレを誘発する、つまり相手を柏陣地に引き込む狙いもあったものと思われます。

 相手の背後をつくためには、相手に出てきてもらう必要があるからです。 ネルシーニョ監督もオルンガと呉屋の併用について以下のように述べています。

相手が3バックだったというところで、大翔とミカの2トップにしたのは、2人が相手の最終ラインと駆け引きすることで相手には脅威になり、ボールを奪った瞬間に背後を取りに行ったりするプレーをやってほしいという狙いがあった。

 

【ロングボールによる前進】は機能したのか?

 【ロングボールによる前進】は効果的に機能する結果となりました。

 要因は3つです。①チーム全体で【ロングボールによる前進】を想定していたこと、②スンギュのキックの精度が高かったこと、②2トップが役割を果たした(ガンバのDF陣に負けなかった)ことが挙げられます。

 一番大きな理由としては、①チームとしてこの仕組みを事前に準備・想定していたことです。前プレを受けてのネガティヴなボールの放棄ではなく、狙いをもったポジティブなロングボールでした。だからこそ先手を打つこと、セカンドボールの回収に適したポジションを取ることが可能となりました。2トップが競ったセカンドボールを江坂が回収し速攻に繋ぐ流れには再現性を感じました。

 加えて、②スンギュのキック精度が相変わらず高いこと、③ネルシーニョ監督が2トップに求めた「駆け引き」の部分で勝利したことも、ロングボールによる前進が効果的だった要因です。

 3点目はこの形で呉屋が競り勝つ→江坂が回収→呉屋が裏を取るという流れからのものでした。

ボールを保持できなくなっていく柏

 しかしながら給水タイム以降、徐々にボールの支配はガンバに移ろう展開となりました。ガンバのシステム変更によって柏のプレッシング、守備の基準点が曖昧になったことで、ボールを奪えなくなったことが要因です。守備の基準が曖昧になったことで、プレッシングが定まらず、非保持の時間が増加しました。ここでいう【守備の基準】とは、「誰が誰を見るか?」を指してます。

 柏の守備は、ガンバの3CHに江坂+三原+サチローをぶつける形でスタートしました。大谷が余る格好となったのは、宇佐美選手(時にはアデミウソン選手)が中盤に降りることで前進を手助けする傾向にあることから、その対策のためだったと思われます。

 清水戦の【532】とシステムこそ違えど、奪いたい場所は同じです。中央からの前進を阻止し、サイドへ誘導したところでチーム全体のスライドによる圧縮でボールを奪う狙いがありました。CHが3枚であることから、横幅を使われたくないからです。

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 思うようにボールを運べないガンバは給水タイムに調整を行います。

 具体的には、ビルドアップ時の立ち位置の変更です。①中盤の底を1枚から2枚に増やすことで江坂のタスクを増加させる(迷わせる、判断を強いる)こと、②倉田選手を1列挙げて大谷の脇にポジションを取ることです。

 元々、ガンバの3CBに対して柏は2枚(オルンガ・呉屋)で追い掛けていることから、基本的には数的不利な状況です。なので、ガンバのビルドアップ隊には時間がある状況は立ち上がりと同様です。

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 立ち位置の変更後は、特に倉田選手のポジションが厄介でした。中間ポジションに立つことで、柏の守備の基準点を逸らしました。

大谷が見る→中央からの移動を意味。ガンバのトップに空けたスペースを使われてしまう
峻希が見る→ピン留めされてWBに自由を与えてしまう
三原が見る→江坂を助けにいけない

 という状況に状況に陥った柏は、徐々にガンバにボールを保持される展開で前半の残り時間を過ごしていきます。2トップで3枚を追うのも難しく、加えてガンバの中盤を捕まえることに苦労することで、前進を許す時間が続きます。

 この状況に柏は、「江坂・サチロー・三原が走りまくる」で対応していました。当然、プレッシングが後手に回ることから、ボールを奪う位置は低くなっていきます。

 しかしながら、低い位置でのボール奪取はガンバが攻撃している状況、つまり柏はカウンターを発動させる機会でもあるわけです。前を向いて奪った際は躊躇なく前線の2枚にボールを届け、局面を引っ繰り返すことで攻略を図りました。実際に2点目はカウンターから始まった攻撃の組み立てでした。

締めの言葉というほどのものではないけれど

 今季のベストゲームといえそうです。オルンガ対策によってボールを持たされるゲームが続いたことで、カウンター以外にもポゼッションによる前進という手段の向上が図られました。保持もカウンターできるという、戦い方の幅を持つことは上位争いを続けていく上で絶対に必要な要素です。

 後半は、4バックに変更したガンバに対して間髪を入れず3バックに変更するなど、さすがの手腕を見せたネルシーニョ監督でした。(書きたかったけど、文字数・・・)

 怪我人続出で野戦病院と化していること、加えて過密日程の影響で練習がほとんどできない状況下で、これほどのチームを作り上げるネルシーニョ監督は尋常ではないと改めて思わずにはいられません。

 叶うなら、もう一度この監督とトロフィーを掲げたいと強く思った水曜日の夜でした。