長えよ!と思った方は※太字だけ読んでもらえばある程度は内容がわかるようになっています。
今節の勝因は、攻撃が良かったことだと考えます。
それを踏まえて、
- 湘南の532脇から前進
- ハイプレスにロングボールという定石
- 良い[攻撃]は、良い[守備]から
をピックアップしていきます。
1、湘南の532脇から前進
システムの噛み合わせの問題です。湘南は守備時532で陣形をセットします。図を見ると一目瞭然、柏のSBが空く(前を向き、時間的余裕がある)状態でビルドアップを開始することができます。当然、湘南もそれは織り込んでいるので、対策は講じています。つまり、柏の攻撃は、SBの振る舞いに大きく左右される展開となりました。結果的に、左利きでボールを扱う技術に長けてた三丸選手からの効果的な前進が勝利へ寄与しました。
図解します①(オープンになるSBと湘南のスライド)
SBが空くとは図のような状況を示します。
しかしながら、「空く」とは言うものの、この状況は構造的な問題であり、湘南も予め織り込んでいます。前々節(マリノス戦)の湘南は中盤3枚のスライドによるSBへのアプローチを行っていました。素早く片方のサイドに寄り(圧縮なんて表現も)、柏のSBにボールを持たせる(出すところがない状況)ことで圧力を与えます。
図解します②(スライドに対する柏の対策)
中盤3枚のスライドによる圧縮は、事前のスカウティングにおいて把握できることから、柏も対応策を講じます。
対応策①スライドさせない
「じゃあスライドさせなきゃいいじゃん!」という発想で打開を図ります。SHの仲間選手は、サイドに開くのではなく内側にポジションを取ることで湘南のIHをピン留めします。
質的優位(個人での打開力)を有する三丸選手を放置することができない湘南は、WBを押し上げることでアプローチを行います。
対応策②WBの裏を狙え
対応策①でWBを引っ張り出すことに成功した柏が次に狙うのは、背後のスペース(主にWBの裏)です。
仲間選手が内側に絞っていることから、裏への抜け出しは江坂選手(とミカ)のタスクとなっています。三丸選手からの縦パスによる裏へのロングボールが効果的に機能しました。
WBの裏であるサイドの深い位置を攻略します。ミカが中央に控えていることからシンプルなクロスによる攻撃や、江坂選手が時間を確保することで全体の押し上げを待つ場面など多様な攻撃でPAに迫ることができました。
三丸選手の質的優位性を活かした532の攻略
「放置するわけにはいかない」とWBを引っ張り出すことができたのも、背後のスペースへボールが出たことも、三丸選手の質的な優位性を活かしたものとなりました。
待望の左利きのSBとして、左足で縦へ前進のパスが出せる三丸選手の存在は今後、より存在感を増していくものと思われます。
結局、左SBが左足でボールを保持できないと、パスを受けたところでCBに戻すか、苦し紛れのロングボール程度しか選択肢がなくなってしまいます。
昨年の序盤や今季に入って効果的なビルドアップができなかった要因の1つであり、課題でもました。
2、ハイプレスにロングボールという定石
湘南はハイプレスの得意なチームです。その目的は、ボールを相手に与えないことよりも、奪ってからのショートカウンターにあるものと考えます。
上述したSBが空いてしまう構造を踏まえ、プレッシング・スタートの合図は、柏のSB→CBにパスが出た瞬間です。中川(寛)選手のクレバーなプレッシングと驚異的な運動量によるチェイシングは、ボール保持をアイデンティティとするマリノスさえ苦しめるものとなっていました。
ハイプレスへの対応策としてロングボール
マリノスさえも苦しめたハイプレスに対して、柏が講じた対応策はロングボールです。
ハイプレスを行うということは、背後には広大なスペースが存在していることとなります。細かいことは考えず、シンプルにそのスペースを突くことで攻略を図りました。プレッシングへの打開策として、ポゼッションで回避を図った川崎戦(回避できなかったけど)とは対照的な方法で攻略を図ります。
苦し紛れのロングボール(ただのクリア)になってしまった川崎戦との相違点は、予め蹴ることを織り込んで試合に臨んだことです。つまり、プランとして組み込んでいたことです。
ロングボールが前提だったことから、江坂選手を初めとする2列目の選手はセカンドボールの回収を前提としたポジショニングが可能となります。江坂選手が前を向いてプレーする機会・時間が多かったことがその証明です。ミカが競る準備ができたことは言うまでもありません。
3、良い[攻撃]は、良い[守備]から
攻撃について触れてきましたが、[守備]がよかったことも特筆すべき点です。
442(4411)によるブロック形成は、適切な立ち位置に配置されていることから、攻撃への移行がスムーズ(効果的なカウンター)です。上述したように、ロングボールが前提であり、セカンドボールを回収する必要があったことから、SHがスムーズに攻撃へ移行できることは重要です。
また、パスの出し手となる茨田選手からのビルドップを阻止するために、江坂選手をマンツーマンで対応させました。これによって、江坂選手は中央にポジションを取ることが可能となります。つまり、奪った瞬間に茨田選手(アンカー)の脇で起点を作ることができることに加え、ミカとの距離が近いことから、セカンドボールの回収可能性が格段に向上することとなりました。
締めの言葉というほどのものではないけれど
仲間選手や三丸選手の活躍は言うまでもありませんが、個人的に影の立役者として江坂選手を上げたいと思っています。もう、今は江坂選手に依存する部分が多すぎて、逆に少し不安要素ではあります。「個人のリソースに依存する組織なんてもろい」的なことを漫画『左ききのエレン』で誰かが言っていた気がします。まあ、代えが効かないというのは、それだけ特別であることだと思いますが・・・。
湘南戦。江坂が上手すぎ。守備では茨田を塞いで中央からの前進を阻止しつつ、トランジションではその茨田の脇からショートカウンターの起点を作る。ロングボールでの前進時にはセカンド拾いまくって(ポジショニングと予測)、足下で繋ぐときは裏へのランニングで起点を作ったり、もうイミワカンナイ
— 羊男 (@hitsujiotoko09) 2020年7月18日