vs川崎(4節・2020/7/11) ボールの保持と撤退。

太字だけ読んでもらえばある程度は内容がわかるようになっています。

 敗因は、川崎にボールを握られてしまったことです。ボールを川崎に渡したことで、主導権を握られたまま時間が推移していきました。
 今回は、なぜボールを握られてしまったのか?について3つ理由を挙げました。

  1. そもそも川崎はボールの保持によって強さを発揮するチーム

  2. 柏はプレッシングよりも撤退を選択した

  3. 相手の強さが保持にあるのなら、自分たちが保持すればいいという発想

1、そもそも川崎はボールの保持によって強さを発揮するチーム

 このゲームを解釈する上での前提として、川崎のゲームモデルはボール保持によってゲームの主導権を握ることです(今更ですが)。つまり、ボール保持に自信を持っています。ボールを保持した際の強さ、クオリティについては、身を持って体験したばかりです。

 ボールを保持すること=ボールを奪うこと

 ボールを持った状態で強さを発揮するチームということは、川崎自身がボールを保持する(相手にボールを渡さない)必要があります。

失った瞬間のプレッシング(ゲーゲンプレス)によって相手にボールと時間を与えず、自分たちがボールを保持する時間を増やすことで主導権を握ります。
 前半で、2得点かつボール保持率は60%を上回るなど、結果・内容ともに川崎の思惑通りに推移する展開となりました。スタッヅという定量的な記録ほど真実を雄弁に物語るものはありません。

2、柏はプレッシングよりも撤退を選択

 柏は、ボールを持つことが得意な川崎に対して、撤退からのカウンターという対策を講じました。ミカによるCB→CHへのパスコース遮断や、3CHによる縦パス封じなど、中央を堅めながら、奪ってからは素早いカウンターで川崎の背後を刺すというプランです。しかしながら、撤退は川崎に時間とボールを与えることと同義でした。つまり、撤退する柏への打開策を考える時間を与えることとなり、結果・内容ともに圧倒されることとなりました。

対川崎のプランは、撤退からのカウンター。

 ネルシーニョ監督のコメントを読んでみます。

序盤、相手に対して守備のところ、ポジショニングもそれほど悪くなかったが、クオリティの高い川崎に対して、ボールを引っかけてからの効率的なカウンターに出て行けなかった。ボールを奪った後に、カウンターに出ていく際のオプションがなかった。

 コメントの内容と、後述する守備陣形を踏まえ、撤退からのカウンターというプランでゲームに臨んだと解釈しました。ボールの保持を得意とする川崎に対して、守備の時間は増加してしまうものの、自陣に引き寄せることで空いた背後のスペースをカウンターで狙うということです。

 

451で守りたかったもの

 撤退時に451を採用した目的は2つです。①アンカー経由の中央からの前進を阻止と、②3CHによる縦パス封じです。

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①アンカー経由の中央からの前進を阻止

 中央からの前進を阻止するために、ミカに与えられてタスクは、CBからCHへのパスコースを遮断することです。プレッシングによるボールの奪取よりも、パスコースを限定することを優先的なタスクとしました。

3CHによる縦パス封じ

 中央に3枚を並べることで、ハーフスペース(大外でも中央でもないレーン)への縦パスを牽制します。

 ゾーンは言い過ぎかもしれませんが、①も②も根本的な考え方は、中央を使われたくないというものです。特に狭いスペースでもパスを回すことができる力のある川崎というチームなら尚のことです。危険な位置で奪うよりも、そもそも危険な場所に入れなければ良いという、発想自体は主体的なものです。

撤退によって与えたものと川崎の打開策

 ネルシーニョ監督は「序盤は良かった(意訳)」としたように、立ち上がりは嵌ったように見えたものの、結果として、この対応策は機能しませんでした。理由は、撤退=川崎にボールと時間を与えることだったからです。つまり、対応策を考える時間まで与えてしまったということです。


 川崎のCBにプレッシングを行わない=川崎のビルドアップに時間を与えることです。時間を与えるということは、考える時間を与えることとなりました。
 鬼木体制4年目である川崎は、撤退されたときの引き出しの多さに、継続することの強さと大切さを痛感せずにはいられませんでした。


川崎の打開策・・・CHのレーン移動
 多彩な崩しを見せていたので一例ですが、川崎はCHがレーンを移動することで打開を図りました。つまり、ハーフスペースから大外レーンへの移動によって、柏のSHに迷いを与えました。この迷いこそが、守備の基準点を逸らすことです。

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 江坂(神谷)が担当する大外レーンに相手の選手が来ることで、「どちらを見るべきか」という迷いが生じます。中央に絞っていた江坂(神谷)が引っ張られる形で外に開いてしまうことで、CB→SHという縦のパスコースが開いてしまう局面が見られました。
 また、CHの瀬川が付いていくと中央パスコース、つまりダミアンへのコースが空いてしまいます。
 このように小さな判断を柏に強いることで、後方で得た時間を前線に届けることに成功した川崎が、撤退した柏を崩していく展開で試合が推移しました。

3、相手の強さが保持にあるのなら、自分たちが保持すればいいという発想

 攻め込まれた柏は対応を迫られます。相手から主導権を奪うために何をするべきか、と。相手はボールのを保持することが得意・・・それなら、自分たちがボールを持てば、相手が得意な状況を消す(ニュートラルにする)ことが出来るのではないか、という発想です。
 つまり、低い位置での奪取後やゴールキックにおいて、蹴らずに繋ぐことです。

 全体が想定以上に押し込まれたことで、カウンターへの移行を試みるも走る距離が長くなりました。ロングボールはミカのコンディション不良もあって競り勝てず、セカンドボールについても2列目のサポートは遠く、ただボールを相手に渡すだけで、再び川崎の保持の局面という悪循環に陥りました。

攻め込まれたことで増えたゴールキックを無駄にしない・・・

 柏は圧倒的に攻め込まれたことで、ゴールキックから攻撃を開始する局面が多くありました。つまり、川崎のゲーゲンプレスを受けずに攻撃を開始する機会を得られたということです。
 しかしながら、足元の技術よりも対人の強さを優先した先発(というか今年の編成)だったことから、繋ぐ意志は見せながらも効果的な保持・前進には至らず、結局ボールを失うこととなりました。

 昨年からの課題でもあるボールを保持できない、ビルドアップできない弱点が露呈した格好です。編成の問題でもある一方、ネルシーニョの好みとして対人に強い選手というリクエストがあったものと思われます。そもそも、足元に技術がありながら、対人も強い選手を獲得するとなると日立台に屋根を付ける方が安上がりになる気はしますが・・・。
 プランとして繋ぐ気があったのか、状況を見て試合途中で変えたのかまでは読み取れませんでしたが、まだ後者であった方がポジティブな印象を持てる気がします。

締めの言葉というほどのものではないけれど

 後半については、リードによって川崎がテンポを落とし、クロージングに入ったことで柏がボール保持する時間が増加しました。呉屋や仲間の強度の高いプレッシングもボール奪取に寄与したものと思われます。
 前線でのターゲットとしてはミカよりも呉屋の方が適していることや、待望の左利きSBである三丸は個人で打開できる能力を有していることなど収穫はありました。
 次郎はコメントで、

自分たちのコンディションもまだ100%には戻っていないが、試合に入る気持ちや球際のところで川崎が1枚上だった。盛り返せる力がまだまだなかったと思う。練習試合をせずリーグ再開したことは、序盤はキツくなるだろうと覚悟はしていた。

  と話しており、ある程度は織り込んだ状況ではあるようです。次節は待ちに待った、有観客での日立台です。