vsFC東京(ルヴァン杯決勝・2021/1/4) 大谷「一番上の『景色』をもう一度」

 大谷「一番上の『景色』をもう一度」

戦えることに喜びを

 これからつらつらと妄想を垂れ流しますけれども、そもそも、まずはこのような妄想を垂れ流せることに感謝を、戦えることに喜びを示すべきなのだと思います。

 棄権や辞退という選択肢が存在し、開催すらも危ぶまれた状況の中で、それでも決勝を戦う機会が残されていること。それは、この上なく奇跡なのではないのか、と。

 僕たちには積み上げてきたものがあって、自分たちの実力で勝ち上がってきた自信と自負があります。

 そして、このメンバーで戦い、結果を残せるのはこれが最後の機会になります。

 しかし、それにもかかわらず、積み上げてきたものを表現することができない、結果すら残らない。そのような結末は、あまりにも悲しい。何よりも悔しい。

 例えどんな結果になろうとも、結果すら残らないよりはずっと良い、と。

 だから、まずは、決勝という舞台を戦う機会を僕たちに与えてくれた関係者の方々に感謝するところから、戦いは始まるのでないかと思います。

大谷が使う「景色」という言葉について

北嶋秀明
「あの『景色』をもう一度見たかったから。」
(1999年のナビスコ優勝を指して)

 僕のアイドルである北嶋秀明は、2011年の優勝を語るときに「景色」という言葉を使います。

 当時、インタビューなどで頻繁に口にしていたことを覚えています。

 詩的で、それでいて胸に秘めた熱い思いが伝わる美しい表現だと思いました。言葉を大切にするキタジならではの言い回しが、個人的にものすごく気に入っていました。

 そしてここにきて、大谷キャプテンが同じように「景色」という言葉を使っていることに気がつきました。


【柏レイソル】2020YBCルヴァンカップFINALティザー~1999_2013_2020~

 キタジを意識した言葉なのか、自然と出た言葉なのかはわかりませんけれど、それでも、脈々と受け継がれてきたものがこのクラブにあることを誇りに思いました。

 それはまさに、文化が継承されている証なのだと。

 「受け継がれてきた」と言っても、たかが言葉でしょう?そんな大袈裟な……と言われてしまうかもしれません。

 しかし。

 たかが言葉、されど言葉です。

 言葉は歴史です。言葉には、魂と意志が宿ります。

 言葉一つで背負っているもの、積み重ねたものの重さを計ることができると思うのです。

 北嶋秀明という「言葉」を大切に扱う人間が発した言葉が、10年という時間を超えて今でも使われていることに、「このクラブはもっと大きく羽ばたける」と可能性を感じずにはいられません。

 このクラブにはタイトルを獲ってきた歴史と、世界を戦ってきた経験があります。

 「一番上の景色」を積み重ねたからこそ掴めるものがあるはずです。

 柏レイソルは強くなければならないのです。

 絶対に勝ちましょう。勝って、柏に帰りましょう。

 そして、どんな時も支えてくれた桐畑和繁警備隊に、はなむけのトロフィーを送りましょう。

 FC東京を知る

 ここから先は、蛇足です。興味のある方だけお付き合いください。

 ネルシーニョ監督の根幹にある考え方として「ニュートラル」を挙げることができると思います。

 「ニュートラル」とは端的に言えば、相手の長所を消すことであることから、FC東京を知ることは大切です。

https://www.football-lab.jp/fctk/

www.football-lab.jp

 FC東京の直近試合を観られなかったので、データから特徴を見ていきます。

攻撃について
  • シュートまで至った割合は・・・
    ショートカウンター19.4%・ロングカウンター20%
  • 一方で、敵陣ボール保持18.1%・自陣ボール保持5.6%
守備について
  • 「コンパクトネス」「※ハイプレス」の指数が高い
    ※このサイトでは、「ハイプレス」の定義を位置よりも強度としているようです。

  • 「フィジカルコンタクト」の指数が高い
  • 「最終ライン(ピッチの1/3より自陣寄り)」の指数が低い
    (撤退守備が少ない?)
カウンターを得意とする一方、自陣からの繋ぎは得意ではない

 データから読み取るFC東京は、ミドルゾーンにコンパクトなブロックを形成しながら、ボール奪取後の素早いカウンターで得点・チャンスを生み出しているようです。

 一方で、自陣からのボール保持がシュートに至ったのはわずか5.6%と、後方からボールを繋ぐ攻撃を行うチームではないことがわかります。

比較(2020年・柏 vs 2020年・東京)と展望

www.football-lab.jp

まずは守備から?カウンターを刺すために

 柏レイソルについては触れるまでもないと思いますが、基本的には両チームとも、

  • カウンターがシュートに繋がる確率が高い
  • 自陣からの保持がシュートに繋がる確率が低い

 という特徴を挙げることができます。

 一発勝負の決勝であることなどを鑑みると、両チームとも守備に基準を置きながら、強みであるカウンターを刺す機会を窺う試合展開になることが予想されます。

 しかしながら、カウンターを刺すためには、相手に高い位置を取ってもらう(=背後のスペースを空けてもらう)必要があります。

 相手のカウンターを驚異に感じる以上、自分達の背後を無防備に晒してまで(空けてまで)前からプレッシングを行うとは考えにくい、というのが私の見解です。

 少なくとも立ち上がりについては、両チームとも自陣低い位置にブロックを形成しつつ、自分たちの背後を消すことを優先する立ち上がりになるものと思われます。

柏レイソルはどう戦うか?

ロングボールによる前進が増加するケース

 背後のスペースを空けたくない、だから、積極的に前から奪いに行く選択をするとは思えないというロジックです。

 ただ、相手にボール保持されるということは、守備の時間が増加することを意味します。

 背後のスペースは空けたくないものの、守備の時間があまりにも増加するのは望ましくない、というのが本音しょう。

 しかしながら、上部データからも分かるように両チームともボール保持による前進は得意ではなく、再現性が見られません。

 自分たちのビルドップが相手の守備に引っ掛かること、それは即ち相手にカウンターを打ち出す機会を与えることを意味します。

 柏レイソルは今シーズン終盤、幾度となくビルドアップのミスから失点を喫しています。

 ある意味で、ボールを保持することがリスクになっている、と考えられます。カウンターの得意なFC東京が相手であれば尚更、その点は意識せざるを得ません。

 シーズンを通じて解決できなかったビルドアップが、たったの二週間で改善できると考えるのは、あまりにも楽観的、希望的観測だと思います。

 では、どうするか?

 繋げないのなら、自陣でボールを持たなければ良いのではないか?という発想がシンプルでわかりやすい答えではないか、と。

 地上でのボールポゼッションを避け、ロングボールによる前進を増加させることで、リスクを極力排除していくことです。

 相手の背後を狙ったものよりも、人に向けて蹴ったものが多くなるものと思われます。なぜなら、FC東京も当然に柏のカウンターを警戒し、背後を空けないような振る舞いをしてくるはずだからです。

 「ターゲットのFWvs跳ね返すCB」「セカンドボールの回収を巡る中盤の主導権争い」という試合展開で推移するものと思われます。

蹴らせてすら貰えないケース

 以上を踏まえた上で、次に考えられるのは、蹴らせてすら貰えないケースです。

 上記データでは、FC東京はボールホルダーへのアプローチが厳しいことがわかります。

 結果如何に関わらず、この日でシーズンが終了することから、日程を考慮する必要はありません。換言すれば、どれほど疲れようが関係ない。死なば諸共。高強度のプレッシングを行うことで、柏に時間とボールを与えないという戦い方を選択することも可能です。

 蹴る時間すら、押し上げる時間すら与えなければ、背後にスペースが空いていようが関係ありません。プレッシングを掛け続ければ良いのです。激しい運度量と高い集中力が求められます(ハイ・インテンシティ)が、早い時間でゲームを決めてしまえば、撤退を選択することも可能です。

 柏レイソル陣地でのボール奪取は、FC東京の得意なショートカウンター発動という状況でもあります。

 このケースで柏レイソルが求められる振る舞いとしては、キーパーを含めた後方の選手でボールを回しながら、相手のプレッシングを剥がす(回避する)こと、もしくは背後へ蹴っ飛ばす余裕を見つけることなどです。

 しかしながら、前述したようにプレッシングに対する耐性が乏しい現状では、ひたすら我慢する時間を過ごすことになりそうな予感がします。

ボールを持たされるケース

 続いて、ボールを持たされるケースです。

 ミドルゾーン〜自陣低い位置でブロックを構えながら、柏レイソルのビルドアップ隊に時間を与えつつ、ブロック内に侵入してきたら引っ掛けてカウンターを打ち出すという戦い方です。

 FC東京の代名詞的な戦い方です。

 柏レイソルとしては、12月の名古屋戦が記憶に新しいことと思います。ボールを持たされ、低い位置に撤退した相手を崩せず非常に苦しんだ末に敗戦を喫しました。

 ボールは保持しているものの、カウンターに怯えながら時間を過ごす、といいましょうか。

 「ボールは支配しているけれど、ゲームは支配されている」と表現される展開です。

 繰り返しにはなりますけれど、やはりボール保持による前進に再現性が見られない中で、不用意なボール保持、ビルドアップは被カウンターのリスクを増大させるものと思われます。

4枚なのか、5枚なのか

 今季は4バックと5バック(3バック)を状況に応じて併用した柏レイソル

 一発勝負の決勝で、果たしてどちらを選択するのか。非常に興味深いものがあります。

4バックのメリット・デメリット
  • メリット
    ①ポジトラ(守備→攻撃)および攻撃の局面でオルンガの周辺に人が居ることでカウンターの威力が向上する
    (オルンガが孤立しない、江坂が中央でプレーできる)
    ②バランスが良く陣地の回復、トランジションがスムーズ
    (ピッチ全体に満遍なく配置できるので)
    ②恐らく4バックでスタートするFC東京に対してプレッシングが噛み合う

  • デメリット
    ①太陽をSBで使うことになるのでビルドアップはより厳しく
    (東京に撤退されると崩せない、バランス崩した配置で被カウンターのリスク増)
    ②CBを3枚並べる3バックよりも守備の強度は低下

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5バック(3バック)のメリット・デメリット
  • メリット
    ①CBを3枚並べられる
    (決勝とあって守備を重要視)
    ②542(523)の布陣になる分、撤退を選択することになる=ロングカウンターを刺せる状況
    ③ビルドアップにおいて、太陽をハーフスペースに初期配置できることで、わずかながら保持の質が向上する

  • デメリット
    ①オルンガが孤立
    ②シャドー(江坂、クリス)のタスク増加
    (クリスの守備を免除すると守備の強度が低下)
    ③後ろに重たくなるので、押し込まれると厳しい

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 怪我人の回復状況次第・・・

 そしてもう一つ、戦い方を予想する上で重要な要素があります。

 それは、怪我人の回復状況です。

 特に三丸(10月18日の湘南戦以来、出場なし)。

 442採用時に太陽を左SBに置くことをデメリットとして挙げましたが、三丸が戻ってくれば、太陽を中央に戻すという選択肢が生まれます。それはそれで、守備の強度に問題が出てきますが、ビルドアップに限れば太陽+三丸の組み合わせは最適解だと考えます。

 また、リーグ戦で守備を支えた大南が代表を辞退したこと、神谷のベンチ外が続いたことなど、ここにきて怪我人が増加しています。前者は守備・空中戦の強度確保には不可欠であり、後者は個で打開可能なアタッカーであることは言うまでもありません。

 個人的な予想としては、三丸が回復していれば4枚、回復していなければ5枚なのではないかと予想します。

 「守備の強度を確保しながら、カウンターを刺すタイミングを窺う」がゲームモデルだとしたら、それを実行するための戦術が「ゲームプラン」です。

 皆さんも、あれこれ想像を、妄想を巡らせてみてはいかがでしょうか。