vsサンフレッチェ広島(2022明治安田生命J1リーグ 第11節)

【3-4-2-1】から【5-3-2】への変更と意図

  • 柏は前節までの【3-4-2-1】から【5-3-2】へ変更。
  • 意図としては、【ハイプレスを用いる広島の背後を狙う枚数を増やしたかったこと】、守備の時間が続き【自陣に押し込まれた際にFWが孤立してしまう事への対応策】の二点であると考えられる。
  • 実際に前半からアンジェロッティが背後に抜け出して右サイドで勝負する局面が複数回(15分、34分など)見られたほか、同点弾についてもFWが2枚存在したため、中央から崩す事ができた。
  • また、ポゼッションの局面でビルドアップに詰まり、前線にボールを蹴り出したとしても1トップよりも2トップの方がターゲットが多く、マイボールに出来る確率は高くなる。
  • 試合全体を通じた印象としても、現状のスカッドでは【5-3-2】が最適解であるように感じた。ポゼッションで主導権を握る事のできない展開になったとしても、前線で時間を作るための手段を確保することができる。
  • リーグ序盤の好調についても、ポゼッションやビルドアップに代わる【ロングボール】という陣地回復の手段を持っていたことが大きい。
  • 以上のような観点から考えたら、ある意味では原点回帰の【5-3-2】採用であると言える。

柏・広島 それぞれの狙い

広島のハイプレス

  • 広島の狙いはハイプレス。
  • 敵陣での同数プレッシングからショートカウンターへ繋げる。
  • その際、CHやWBまでも敵陣に送り込む。前傾姿勢になり、DFラインが柏のアタッカーと同数になる事やDFラインの背後に広大なスペースが生じるリスクを受け入れてでも、敵陣でボールを奪いに行く。非常にアグレッシブな姿勢だった。

柏の【疑似カウンター】

  • 柏の狙いは、自陣保持で広島を引き付けてから背後のスペースを狙うという【疑似カウンター】にあった。以下、監督と古賀のコメントを抜粋。

「相手も前から守備に出てくるチームでしたし、あとは最終ラインの人数が3枚だけの状態があるので、そこをうまく突いていくというのは、練習から準備してきたところではありました。

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我々がボールを握って主導権を握るだけのスペースはありましたので、相手を引き出してからの判断、相手が空ける背後のスペースをもう少し効率よく突いていけるように選手たちに指示を出し、後半に入ってから選手たちがピッチの中で修正してくれたことで我々が優位にボールを動かせたと思います

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  • 相手の背後のスペースを使うためには、相手に前傾姿勢になってもらう必要があった。そのために柏は、自陣保持から攻撃を組み立てる事を目指していく。2トップを選択した事も辻褄が合う。

広島のプレッシングを越えられない柏

  • 柏は【疑似カウンター】を目指したものの、広島のプレッシングを越えられず、思うような前進ができなかった。
  • ボール保持者に選択肢を与えようと、前線の選手が自陣に降りていく。しかし、同時に広島の選手も付いてきてしまうために、自らパスコースやスペースを潰すことになってしまった。
  • 24分、30分には中村を古賀の横に降ろす場面が見られる。三丸を高い位置に移動させることでポゼッションからの前進を目論むものの、広島のプレッシングを回避するには至らなかった。
  • 稀にシンプルなロングボールを2トップや相手の背後に入れる事で効果的に敵陣へと迫るシーンも見られたが、あくまで保持からの前進を優先しているように見えた。
  • 個人的には2トップを積極的に活用していく意味でも、もう少しロングボールを増やしても良いような印象を受けた。
  • 柏はポゼッションやビルドアップのミスを突かれ、広島の得意なシチュエーションでゲームが推移する。得意なハイプレスから柏陣地でゲームを進める事に成功する広島。

ポゼッションで陣地回復を図る広島

  • ボールを失う回数が増える柏。広島がボールを保持しペースを握る。
  • 広島はポゼッションの局面へ移行した際も、柏の2トップに対して3CBという数的優位を活かした前進によって効果的に陣地を回復していた。
  • 敵陣でボールを奪うためには、陣地を敵陣まで回復しておく必要がある。そのための手段としてポゼッションを選択した広島だった。
  • 【5-3-2】を採用した柏は、全体が高い位置を取る事が出来た際はネガティブ・トランジションへの移行もスムーズである一方、WBがピン留めされると後ろに重たくなってしまう弱点がある。広島のビルドアップ隊に時間を作られてしまい、三丸・大南が中々前へと出ることが出来なかった。

逆転弾は理想的な敵陣でのプレッシングから

  • 主導権を握られ、幾度も決定機を与えた柏。スンギュのビックセーブで何とか失点を凌ぐうちに、次第にペースを握り返す。
  • 後半に入ってからシンプルなロングボールが増加した。早めに縦に付ける。2トップという事もあり、比較的ボールが収まりやすかった。細谷・アンジェロッティ・サヴィオの距離感も近く、セカンドボールの回収も概ね良好だった。
  • 素早く敵陣にボールを送り込みながら陣地を回復する。敵陣でプレーする事が出来れば、例えボールを失ったとしても、自分達が守るべきゴールから最も遠い敵陣で守備を始める事ができる。
  • 逆転弾も敵陣でのプレッシングからショートカウンターである。WBが高い位置までプレッシングに出られており、理想的な展開だった。

  • また、時間経過とともに広島のプレッシングの強度が低下したことも一因と考えられる。相手がボールを奪いに来なければ、こちらがボールを握る時間が増えてくる。サッカーという競技では、フィールド上にボールは一つしか存在しない。
  • 広島のプレッシングには強度が求められる。気温上昇と疲労蓄積の影響でブレーキの掛かるタイミングは必ずある。広島サイドからすれば、前半でゲームを決められなかった事が悔やまれる結果だった。