vs全北現代(ACL・2018/2/13)HDDを旅しようvol.3

 ネル一次政権、達磨さんと続いたので、今回は下さん時代の試合を振り返ります。

 先日、この本が届きました。まだプロローグしか読んでいませんが、久しぶりに下さんのサッカーが観たいと思いました。
 しかし、よりにもよってこの試合。下さん時代の録画はこれしか残っていませんでした。残念です。



 メンバーや試合経過など公式記録は上記ツイートからお願いします。
 そして、予めご了承頂きたいのは、私は下さん教(狂)だということです。
 今回はただひたすらに、全力で下さんを肯定します。

 

ボール保持を放棄した理由

 このゲームを一言で表現すれば、「ロングボール」だ。それは全北はもちろん、柏も含めてである。下さんのポジショナルなビルドアップを観たかったのだが、ロングボールに終始する展開となった。
 ボールを保持することでゲームの主導権を握ることが、下さんの(当時の柏レイソルというクラブ全体の)ゲームモデルであったと記憶している。しかし、余りにもボールを蹴っ飛ばす。ボールの保持を放棄している。「ゲームモデルとゲームプランは違う。」とは、奈良クラブの林監督。ボールを放棄した理由を探っていきたい。

理由① ピッチコンディション 

伊東純也「一瞬の隙を突かれてもったいなかった」/ACL 全北 vs 柏【試合終了後の選手コメント】 : 「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

 第一に物理的な問題だ。有料記事なので引用は差し控えるが、ピッチが凍っていたようだ。公式記録には1度とある。極寒も極寒だ。
 自陣低い位置でのボール保持、ビルドアップでは、ミスが失点に直結する。GL初戦という重要度を鑑みるならば、不確定要素を最大限排除し、リスクを撤退的に取り払うことは理に適っている。ボールを自陣から遠い位置へ素早く運ぶという論理に破綻はないだろう。

理由② 相手のストロング・ポイントを消すため?

 第二に相手のストロング・ポイントを消すためのロングボール選択だ。ネルシーニョが言うところのニュートラルな状況といえる。
 なぜ、ロングボールがニュートラルな状況を作ることに繋がるのか。
 全北といえば、前線の選手へ目掛けたロングボールがストロング・ポイントである。ロングボールによる前進によって、全体の押し上げを図る。全体の(組織的な)押し上げによって、コンパクトな陣形の維持が可能となる。コンパクトな陣形の維持は、ボールロスト時(ネガティヴ・トランジション)において即時奪回が容易になることから、ボールの保持(攻撃)の局面を継続して行うことができる。
 ただ、全体が押し上がっているということは、構造として、背後に広大なスペースが存在することと同義だ。これは事前のスカウティングで知り得たことである。柏は徹底的にこの「背後のスペース」を素早く狙うことをゲームプランに据えているようだった。要は、カウンターである。
 ピッチ・コンディションが悪く、ボールを保持する時間がない状況であれば至極全うな選択といえるだろう。ボールを奪った瞬間(ポジティヴ・トランジション)の優先事項は、前を見ることだ。とにかくボールを前に付けることで、素早く仕留めることだ。
 結果としてこのゲームプランは、2点を先制することに成功するものの、3失点を喫する要因ともなってしまった。

 

ロングボールは手段であり、目的ではない

大谷秀和「簡単に勝たせてもらえないという厳しさを味わった試合だった」/ACL 全北 vs 柏【試合終了後の選手コメント】 : 「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

キム ボギョン「個人的にはどうしても勝ちたい試合だった」/ACL 全北 vs 柏【試合終了後の選手コメント】 : 「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

 タニとボギョンに限らず、口を揃えて「もう少しボールを繋ぐことが出来れば」とコメントを残している。
 裏のスペースを素早く狙うことや、前にボールを付けることを意識するあまり攻め急いでしまう・・・よくある話しだ。だから、ロングボールが増えていく。確かに、素早く相手の背後にボールを届けるだけなら、中盤を省略した方が早いかもしれない。しかしながら、相手の背後を突くことが出来る状況とは、自分たちが撤退を強いられている状況である。下さんといえば、美しいほどに圧縮された(コンパクトな)442のブロックだ。撤退した状況でのロングボールは、ただ相手にボールを与えているだけであり(蹴らされている、とも言う)、相手に攻撃の機会を与えることである。
 空中戦に強い選手を前線に配置することで、強引に打開を図ることが可能なチームが存在することも確かだ。全北がまさにそういうチームだ。ただ、柏レイソルは違う。最前線にクリスを配置していることからも、空中戦を挑んだわけではないことが読み取れる。
 後半の3失点についても、ボールを相手に渡すことで守備の時間が増えたことが原因だ。ボール保持を行うことが前提のチーム編成だったこともあり、被ロングボールへの対応は非常に不安定なものとなった。ファウルを与える回数も増加してしまった。

①手段の目的化が相手にボールを与えた。(裏を狙うこと・カウンターが目的のはずが、一手段に過ぎないロングボールに固執してしまった。)
②ボールを相手に与えたことで、守備の時間が増加することに繋がった。
③守備の時間が増えたことで、被ロングボール(空中戦)の弱さが露呈してしまった。

締めの言葉というほどのものではないけれど

下平隆宏監督の試合終了後の会見コメント/ACL 全北 vs 柏【コメント】 : 「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

 下さんも「攻撃の時間を増やしたかった」と言及しているように、守備の時間を減らしたかったのは事実だろう。
 それでも、ゲームプランにカウンターを据えることについては理に適っており、論理的な判断だと感じる。問題はそれ以前のところにあると考える。
 特に編成面だ。ACLを戦うにはFWもDFも、空中戦に強い選手が不足している。シーズン序盤、試合終了間際の失点を繰り返すこととなるが、結局のところ編成や過密日程によるところが大きい。
 その編成についても、天皇杯を年末まで戦ったことで、編成が後手に回ってしまったことが原因だ。そこまで勝ち残ったからこそ、ACLに出場できたのだが、結果的にGLの敗退が下さんを解任に追い込んだ。解任後、オルンガやナタンを獲得していることから、下さんなりに感じるところがあったのだろう。後にエルゴラッソにて「まだやれたのに」と回想している。やはり自分は、未だに下さんの解任は腑に落ちていない。それがこのブログを始めるきっかけになったのだが、それはまたの機会に・・・。