vsガンバ大阪(2022明治安田生命J1リーグ 第13節)

柏の保持 【4-4-2】に対して【3-1-4-2】の優位性

  • 「ポゼッション」に悩みを抱える柏だが、この日は穏やかにボールを保持しながら攻撃を行なうことができた。
  • ビルドアップ隊からの縦パスがライン間に刺さる場面が多く見られた。また、中盤でボールを受けた選手も、そのままターンしながら前に運び、多くのチャンスを創出することに成功している。
  • なぜこの日に限ってビルドアップが上手くいったのか?
  • それは、【システムの噛み合わせ】が一因であると考えられる。

(7:17、8:10、13:15、16:50、19:10などから抜粋)

  • 柏は【3CB】でビルドアップをスタート。対してガンバのプレッシングは基本的にFWの【2枚】が担当ふる。ここで【3vs2】という数的優位の局面を確保できる。
  • 特に左からの前進が多かった要因として、古賀が【ボールを運ぶこと】が出来るほか、両足でボールを扱うことができるため【パスコース】を選択することができる事が大きい。反対サイドの高橋とのキャラクターの違いと言っていい。
  • 【ビルドアップの出口】についても、柏のCH【3枚】に対して、ガンバのCHは【2枚】。ここでも数的優位を確保できる。どこかを埋めるとどこかが浮く構図。小屋松が状況を見ながらボールを受けに降りていくことも、ガンバの守備者を困らせる要因にもなっていた。
  • このように、初期配置で位置的な優位性を確保できたことが、スムーズなポゼッション、ビルドアップに寄与した。ポゼッションで敵陣まで侵入することで、例えボールを失った際ももう一度敵陣で守備をやり直すことができる。得意のハイプレス〜ネガトラを繰り出すことができるため、二次攻撃へと繋がりペースを握ることに成功した。

柏【5-3-2】の泣き所から生じるズレを使うガンバ

  • 一方のガンバも保持からチャンスを創出する。
  • 柏非保持【5-3-2】に対して、ビルドアップ隊に【GK+2CB+CH】の4枚を組み込みながらボールを握るガンバ。中盤は右SHの石毛を内側に配することで菱形に近い形だった。
  • 柏に限らず【5-3-2】は、【相手のSBへのアプローチ】と【そこから生じるズレの解消】が一つの課題・テーマである。対戦相手としてはそのズレを突くことが攻略に繋がるわけだが、ガンバもしっかりとスカウティングを行っている様子が窺えた。
  • 柏は基本的にWBを上げることで相手のSBを対処し、敵陣でのプレッシングを行いたい。
  • 実際にこのゲームでペースを握った時間帯や広島戦の後半など、大南・三丸の両WBが敵陣までアプローチが出来ている時は内容も伴っていることが多い。

  • 「それならば」とガンバは、大南の空けた背後のスペースを使うことでプレッシングを回避し、柏陣地への侵入を目論む。
  • 大南が相手のSBへアプローチに出た際の背後のスペースに走り込まれて、サイドの深い場所までボールを運ばれるシーンや裏を取られる場面が見られた。(ループシュートのシーンなどが良い例)
  • 繰り返し狙われていた場所でもあり、柏攻略としてスカウティングの段階から仕込まれていたものと思われる(さすが片野坂監督)。
  • また、ガンバのビルドアップ隊4枚(【GK+2CB+CH】)に対して、柏は2トップなのでさすが追いきれない。中央からの前進に蓋をしてサイドに追い込んだとしても、ビルドアップをやり直されて逆サイドに振られてしまうとスライドが追いつかずにジリジリとラインが後退する場面も見られた。
  • 【5-3-2】の泣き所であるサイドのスペースを効果的に攻略した前半のガンバだった。

一転してボールが運べなくなる柏 ガンバの修正

  • 互いに保持からチャンスを創出する見ごたえのある内容だった前半から一転。後半は、膠着した展開となった。
  • 一番大きな変化・要因として、両チームの【システム変更】が挙げられる。
  • 柏は【5-3-2】から【3-4-2-1】へ、ガンバは【4-4-2】から【3-4-2-1】へそれぞれ変更を行ったことでミラーゲームとなる。
  • このシステム変更の意図を探る。
  • まず柏は【5-3-2】でサイドのスペースを使わてしまったことへの修正だ。今季のネルシーニョ監督は【5-3-2】でスタートしても、サイドから崩される時間が増加すると【3-4-2-1】へ変更することが多い(名古屋戦など)。相手のSBにアプローチが掛からず、生じたズレから前進されてしまう状況を解決したかったものと思われる。
  • 一方のガンバも噛み合わせのミスマッチは如何ともし難く……といったところだろう。【4-4-2】で曖昧になったマーカーを明確にする。守備の基準点を整理するシステム変更であった。
  • この変更でペースを掴んだのはガンバだった。
  • 柏は自然体で確保出来ていた位置的優位を手放すことになる。位置的な優位性を使いながらのビルドアップであったため、ピッタリ枚数を合わせてきたガンバの守備に対応できなくなってしまう。
  • 劣勢時に散見されるビルドアップがサイドで詰まり、被カウンターからジリジリとラインが後退する悪循環に陥る。
  • 加えて、前半は【5-3-2】でカウンター要員が2枚だったことに対して、後半は【3-4-2-1】で細谷1枚。ポゼッションで時間が確保できないのならばFWがボールを収めることで時間を作り陣地を回復する必要があるものの、さすがに細谷1枚では相手のマークも集中してしまう。
  • FWが孤立することで空中戦の勝率も低下するほか、セカンドボールの回収も難しくなる。ビルドアップで時間が作れないため、そもそも細谷に入るボールが無理目な質の低いボールになってしまった。
  • 終盤はガンバが強度を落としたことで再び敵陣に押し込む展開となったものの時間切れ。
  • 加藤はよく絡んだと思うが、もう少しプレー時間が欲しいというのも本音のところ。手塚同様に、ビルドアップ隊が時間を届けてあげられたら輝けるタイプだと思う。

雑感

内容の再現性、意図的に確保した優位性だったのか。

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  • あとは決めるだけ……といった内容だった。監督や選手もコメント読む限りではそれほど悲観していない模様。本当に「結果だけ」が足りなかったと。
  • しかしながら、相手に修正が入った途端に劣勢を強いられ、跳ね返すことができないというのも、果たして「内容は良かった」と手放しで喜んで良いものか悩ましいところ。
  • 【3-1-4-2】という「初期配置での位置的優位性」はガンバをスカウティングした上での選択ではなく、広島戦・浦和戦からの継続によるもの。
  • 意図的に確保した優位性ではないと思われることから、内容の再現性については懐疑的に捉えた方が真実に近いような気はする。