柏レイソルの2021年3月期決算について 神様仏様スポンサー様

営業収益:前期比+1,473百万円で過去最高を達成

 コロナ禍にありながらも、増収を達成。営業収益は過去最高を記録し、50億円の大台目前に到達。
 しかしながら、【スポンサー収入】の増加は、後述するコロナ対策費用に係るものと推察される。また、【その他収入】の大幅増加についても、オルンガの売却益が大半を占めると考えられる。
 以上のことから、2021年3月期の増収は、一過性・突発的事象によるものであり、今後もこの水準を維持することは難しいものと思われる。

 以下、要因分析。

  • スポンサー収入+687百万円
     【スポンサー収入】の増加分は、【試合関連経費】の増加分(+527百万円)とほぼほぼイコールになることから、コロナ対策費用として支援してもらったのではないか?というのが個人的な見解だ。
     2019シーズンのJ2から2020シーズンはJ1となったことで、増額してくれたスポンサー様もいたのではないかと思われる。

  • 入場料収入▲173百万円
    無観客、観客数制限による減少。

  • Jリーグ配分金+180百万円

  J2からJ1へ

  • アカデミー、物販は割愛
    物販1百万円。スタジアムでのグッズ販売のみを認識しているからだと思われる。
  • その他収入+939百万円
    オルンガの売却益、航輔は0円との報道あり
 

営業費用:前期比+409百万円 「試合関連経費」が増加

 営業費用は、微増にとどまる。増加分についても「試合関連経費」によるもので、コロナ対策関連費用の支出増加が影響したと考えらる。

 以下、要因分析。

  • チーム人件費▲61百万円
     人件費は微減。
     2020シーズン前に大型補強に動いたこともあって依然として高止まり。高級取りと思われるオルンガを放出も、新外国人の大量加入によって、引続き人件費は現水準を維持するものと思われる。
     呉屋の放出が完全だったことで改めて感じたことだが、やはりサラリーや償却負担(移籍金を契約期間に応じて費用計上)を軽くしたい思惑があるのだろうという印象を受けた。売却益が少なかったとしても、選手の保有権を手放し、固定費の圧縮を図ることで、僅かでも損益水準の向上を図りたい、と。
     純利益は昨年の▲10億円を除けば、プラスマイナス0近辺を推移していることから、相当シビアな予算編成であることが推察される。コストに見合わないパフォーマンスであれば、売却益で元が取れなかろうと放出していくことで、固定費の削減を図りながら、浮いた分で新たな選手を獲得していく……という、悪く言えば「ガチャを回し続ける」、良く言えば「新陳代謝を繰り返す」スタンスは変わらない。まあ、それこそが、クラブが主張するところの「現場主義」 であるわけだが。
  • 試合関連経費は割愛
    無観客、観客数制限試合の開催によって減少するかと思ったが、横ばいだった。 
  • トップチーム運営費+527百万円
     主に「移動関連費」や「施設関連費」などが含まれることから、コロナ対策関連費用の増加が一因と推察される。クラブハウス内の感染対策や遠征に際しても相当気を使っていたとの報道あり。
     また、「代理人手数料」などもここに含まれることから、ブラジル人大量獲得に係る手数料の発生も要因と考えられる。 
  • 物販関連経費、販管費は割愛
    特筆すべき変化はなし。

当期純利益は21百万円

 前期の▲1,013百万円からは大幅回復。費用は前期より微増も、大幅増収が補ったことでプラスでの着地を達成。営業収益の大半を「人件費」に投入する経営方針は継続しており、損益構造に特段の変化は見られなかった。

 コロナ禍において入場料収入が減少する中でも、スポンサー収入増加によって増収を達成するなど、さすがは親会社様……というほかない決算内容となった。

 しかしながら、サポーターが経営に与える影響が極めて小さいことを改めて示すものでもある。未だに太鼓が解禁にならない点など、サポーター向けの対応で重い腰が上がらないのには、そういった背景があると個人的には考えている。

 企業として、どこを向いて仕事をするか。株式会社である以上、株主が最優先であるのは当たり前。それならば、次はサポーターか?いやいや、事業活動を営むことがでるのは、誰のお陰?営業収益全体の60%にも及ぶスポンサー料を提供してくれるスポンサー様の存在あってこそ。当然、そこが二番目になる。販売会社に置き換えれば、大して買い物もしないお客様より、一定額を定期的に購入してくれるお客様の方が大切なのは明白。ちまちま日銭を稼いだところで仕方がない。

 企業としては至極真っ当な優先順位に基づいているとは思う。それがサポーターにとって、良いか悪いかはまた別の話。

 余談はさておき、損益水準が例年並みであったことから、貸借対照表に与える影響も限定的となった。特筆すべき変化は見受けられないことから、貸借対照表については、割愛する。

 2020年3月期の10億円もの赤字によって傷んだ財務状態は今のところ放置されている状況ではあるが、きっと、そのうち親会社が何とかしてくれるのであろう。やはり、持つべきものは親会社。世界の日立は半端じゃないことを、改めて思い知らされる柏レイソルの2021年3月期決算だった。