vs広州恒大(ACL・2013/09/25)HDDを旅しようvol.1

 HDDの奥底に眠っている録画を見返す良い機会だと思いました。
 大雑把かつ面倒臭がりなので基本的に試合の録画はしていません。DAZNになってからは特に、アーカイブも残るので・・・。
 それでもHDDを見返すと、スカパー!時代のリーグ戦や地上波で放送したACLなど、いくつか録画が残っていました。
 遠征はできないけど、過去への旅なら自宅からでも出来るじゃないか!
 ということで、公式戦の再開が先か、HDDの録画を見尽くすのが先か。前者である祈って、今できることをやっていく所存です。
(ベストゴールpart2は下書きが消失したことから、モチベーションを探す旅に出ているところです。

[https://www.reysol.co.jp/game/results/2013/130925acl.php
レイソルさん、リンク切れてるよ)

(2013-09-26)AFCチャンピオンズリーグ2013 準決勝 第1戦 柏レイソル敗れる|トピックス|大会・試合|日本サッカー協会

 柏レイソルにとって大きな転機となった試合です。
 後に寺坂氏はこの試合(と2ndレグ)を振り返って「到底敵わないと思った」と述べています。
 「アカデミーを主体とするシームレスな組織でボールを握るサッカー」というゲームモデルに基づくチーム作りへの機運が高まった背景には間違いなくこの試合があったと思っています。(この試合がなくても達磨体制は発足しただろうし、そのためにクラブが時間を掛けて準備していたこととはもちろん)
 資金力では敵わないからこそ育成を!という、ある意味でこのクラブの根本的な限界が露見した瞬間でありながら、柏レイソルは強くなければならないのだとサポーターが心に誓った瞬間でもありました。
 それぞれが柏レイソルの未来に想いを馳せ、世界で勝つためにもっと強く賢く逞しくなければならないと多くの人が痛感したゲームではなかったでしょうか。


ネルシーニョが使う「ニュートラル」の意味

 ネルシーニョは「ニュートラル」という表現を多用する。そもそも、ニュートラルとは何を指しているのだろうか。
 私個人的には「相手のストロングを消した状況(状態)」という解釈だ。
 このゲームでいえば「広州の強力な前線3枚にオープンな状況(フリーかつ前を向いた状況)でボールを持たせない」というのが、ニュートラルな状況ということになる。
 そのニュートラルな状況に持ち込むための手段・手法が戦術だ。ネルシーニョが名将たる所以は、その抽斗の多さだと私は考えている。

驚くほど完璧な前半と、変わらないネルシーニョの哲学

 結果があまりにも印象的だったことから、内容も酷いものだったと記憶していたが、決してそんなことはなかった。
 決定機を逸した瞬間にあのネルシーニョが微笑んでしまうくらいには完璧だった。

 先発は菅野、チャンス、大輔、ドゥー、和、栗澤、バラ、TJ、ジョルジ、クレオ
 ボールの非保持では、前からのプレッシングでは→4141、撤退4411(442)。
 ボール保持ではTJとクレオがターゲットになる442に近い格好。

 前述したニュートラルな状況を作るためにネルシーニョが選んだ考え方は今と変わらない。
 高い位置でプレーすること、もしくは撤退することで自陣にスペースを作らない(=相手にスペースを与えない)。
 前者の「高い位置でプレーする」は、まさしく2019年〜2020年に柏レイソルが選択している戦い方と同じだ。
 自陣でのビルドアップは足元でパスを繋ぐポゼッションではなく、TJ+クレオというターゲットへのロングボールが中心。当然、セカンドボールの回収を図るために、チーム全体で押し上げることが必要である。来るべきトランジションに備えるためだ。
 あれ?今のレイソルと一緒じゃね・・・?
 という、衝撃的な現象を目のあたりにして、改めて名将ネルシーニョを思い知ることとなった。
 たしかに、正しいポジションを取ることや全体をコンパクトに保つことは、サッカーというゲームを有利に進める上で普遍的な原理であるから、当然といえば当然だ。

 やっぱりボールを持ちたい広州は、前線からのプレッシングを試みるものの、再現性は乏しく各々が好き放題追いかけている印象だ。
 柏ビルドアップ隊は無理せずロングボールでプレッシングを回避する。TJやクレオがターゲットとしてある程度の勝率を収めたこともあって、広州のプレッシングを完全に無効化しながら、チーム全体での前進、押し上げを図った。コンパクトな陣形での押し上げが成功していることから、ボールを失った瞬間に再び高い位置で守備が再開できる。高い位置で守備を始められるということは、まさに広州の3枚にオープンな状況を与えていないことを意味している。ニュートラルだ。
 ただ、この戦い方は、ボールを失った瞬間のゲーゲンプレッシングが勝敗を分かつポイントとなる。高い位置にチームの陣形をセットしているということは、後方にスペースが存在する(=与えている)ことと同義である。そこにボールが入る瞬間というのがまさに、広州の3枚がオープンな状態でボールを持つ状況だ。一番与えたくない状況である。
 クレオとTJの非常にクレバーなプレッシング(今風に言うとカバーシャドウ)は、例えボールを奪い切れなかったとしても、自陣に撤退する時間をレイソルにもたらした。撤退してスペースを埋めてしまえば、広州の3枚も強引なプレーを余儀なくされる。時間もスペースもないからだ。


①ロングボール→②2nd回収+カウンター+押し上げ→③(即時奪取→攻撃再開)or(撤退してボール奪取→①へ)


 相手をニュートラルな状況にしながら、再現性の高い循環の中で決定機を創出していく。
 攻撃が好きな広州の前線3枚は守備意識に乏しく、レイソルのSBの追い越しや、CHのサイドへ流れる動きで比較的容易に数的優位を作ることに成功する。
 あと一つどれかが決まっていれば違う未来が待っていたかもしれない。しかし、それはたらればの話だ。それでも、たらればの一つでも言いたくなるくらいには、完璧な前半であった。

 と、ここまで勢いにまかせて書いて見たものの、結局、語られるのはここまでだ。もちろんフルマッチで映像は見た。しかしながら、後半はまるで印象が変わってしまった。
 急激に運動量が減少し、不用意なボールロストを連発する我が軍。
 悪いのはネルシーニョでも選手でもなく、紛れもなく疲労。地獄のような(今にして思えば幸せすぎる)連戦の真っ只中。
 試合後のネルシーニョが珍しく不満を吐露するくらいには厳しい連戦だった。
 特にゲーゲンプレッシングの部分でクレオ疲労は相当なものだったことから、澤と交代するなど対応策は講じたものの今一歩。全体の疲弊具合が尋常ではなかった。

 久々に当時のレイソルを見たが、やはり印象的だったのはクレオ
 一年間の在籍だったものの、あそこまでサポーターの心を掴んだ選手もそうはいない。プレッシングの質やボールの収め方、守備の意識・理解力など歴代最高レベルの助っ人。顔も格好いいし。もう少し一緒に戦いたかった。今何してるんだろうなあ。